長かった東北旅行記も、あと2回を残すのみとなりました。そこで今回は、田代島を歩いていて思ったことを書きたいと思います。
ハチワレの子ネコとお別れして歩くことしばらく、意外に島ネコの姿が少なく、触れ合うこともなかった「マンガアイランド」を通り過ぎて海の方へと下る道を歩いていた時のこと。道沿いの茂みの中から一匹のハチワレが現れました。
まだ生後半年ほどと思われるほぼ黒ネコに近いそのハチワレは、左の耳がねじ曲がっているうえにやせ細った、いかにも生命力が弱そうな島ネコでした。
その島ネコは、かなり空腹な様子。足元にまとわりついてきては、必死ににゃあにゃあと鳴いてエサをくれとねだります。
先ほど通り過ぎた「マンガアイランド」では、外国から来た観光客の方が木製のテーブルの上で2、3匹の猫にエサをあげています。その距離はこの島ネコに会った場所から30メートルほど。視認することもできる距離ですが、この島ネコはそこに行こうとはしません。
そこで私は気づきました。この島が、全ての島ネコにとっての楽園ではないということに。
考えてみれば、その島ネコに出会うまでにも何度かあったのです。群れに混じらず一匹だけ物陰からひょっこり現れる島ネコが。群れから少し離れたところに現れてはみたものの、群れの中の身体の大きな猫に追い散らされる島ネコが。
これは私の推測が含まれた話になりますが、この島ではネコは人から大事にされてはいるものの、あくまでネコ同士のことはネコ同士で解決する、というのが決まりなのだと思います。ですので、生まれた子ネコの中には死んでいく子もいるでしょうし、群れから追われた島ネコは厳しい環境で生きていくことを迫られる…そういう世界なのだと思います。
結局、あげるものを何も持っていない私は、その島ネコに何もしてあげることが出来ずにその場を去ることになりました。しかし、その島ネコにとっては観光客からもらうエサが生命線なのでしょう。20メートルほど歩いて振り返ってもまだ、道の真ん中に座ってこちらをじっと見ていたその姿が今でも忘れられません。
ちなみに次に島へ行く時にこういう子のためにエサを持っていくか、ですが、おそらくそれはしないと思います。こう書くと、冷たい人間とお感じになる方も多いと思いますが、田代島で観光客がネコにエサをあげることを禁止しているのは、島の人たちにとって迷惑になるそれなりの理由があるからだと思うからです。それは、もしかすると島ネコが増えすぎないようにする「自然淘汰」のためかもしれませんが…それも、私が会いに行った島ネコたちの生きる世界なのだと思います。
次回、田代島、そして東北旅行記の最終回です。